私のフランス短期留学は2011年3月11日に始まる予定でした。 前日の3月10日夜、TOURSの気温をインターネットで確かめながら、私は、翌日午後9時55分エールフランス277便で、初めてフランスへ向かうことに少し不安を感じていました。スーツケーツをもって歩けるかな?電車が遅れないで走るかな?地震で飛行機が飛ばないことはあるのかな? 私は子供の頃(いま50代の方ならこの気持ちは理解できると思います。)海外に強くあこがれていました。海外留学をしたくても、「女性の幸せは結婚」と大正生まれの母は絶対許してくれませんでした。結婚後、夫に海外留学したいと伝えても、快い返事はもらえませんでした。

2011年3月11日午後2時46分、この日は日本に住む人々はもちろん、世界の人々が決して忘れることができない悲劇となる東日本大震災が起きたので す。3度目の大きな揺れのあと、私は時計をみて、「飛行機に乗らなくちゃいけない!」と何度も頭の中で繰り返していました。私は動揺していたし、地震の大 きさを理解していませんでした。徒歩で帰宅する人の波に逆らい、かすかな希望をもって駅に向かいました。ひたすら歩き、1時間後にたどり着いた大崎駅で今 日は交通機関がすべて動かないことを知り、初めての短期海外留学を諦めざるを得ない厳しい状況におかれていることを実感しました。

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TVで放映される悲惨な状況に心が痛みながらも、私の長年の夢だった海外留学をどうしてもあきらめることができませんでした。悶々とした気持ちを抱えつつ、交通機関の運行状況を調べ、2日後の3月13日午後9時55分、轟音とともにエールフランス277便が夜の成田空港を離陸した瞬間、長く待ち望んでいた海外留学への第一歩を踏み出したことで胸がいっぱいになりました。

フランス到着後、あらかじめ、留学担当の大塚さんがアレンジしてくれたおかげで、月曜日10時からクラスに合流することができました。(本来は8時に学校に行き、レベルチェックをうける)

寝不足と出発前の混乱のため、頭の中がパニックになっているにも関わらず、Jennifer先生のよく通る美しいフランス語(私のフランス語能力の欠如のため話している20%くらいしか理解できていないにもかかわらず)に夢のように引き込まれてゆきました。
それから4日間午前中、3時間の講義を受けました。クラスは8人。それぞれレベルは違うけど、Jennifer先生は見事(!)に各人のレベルに合わせて質問をし、答えを引き出し、クラスに参加している生徒一人一人が自分のもっている最大限の力をだせるように運営してくれたと感じています。

午後はTOURSの街めぐり、古城めぐり、お料理教室と5日間はとても忙しかったです。毎日報道される原子力発電所事故のニュースに日本はどうなっていくんだろうという不安はありましたが、家族からのメールで日本人の冷静さを知り、午後のスケジュールを十分に楽しむことができました。

金曜日、クラスメートのあたたかい言葉に送られて、TOURSを後にしました。地震の影響でフライト時間の変更があり、シャルルドゴール空港近くの空港に泊まらないと搭乗できないことがわかっていたからです。
語学学校の校長が空港近くのホテルを私の考え(値段等)を尊重しつつ、担保としてご自身のクレジットカードの番号を宿泊先に連絡し、手配してくれました。一見怖そうな校長が、淡々と事を進めてくれる姿にヨーロッパ人の心に根付く思いやりを強く感じました。

話は前後しますが、ホストファミリーとなったマダムは、私のTOUR到着時間に駅まで迎えにきてくれ、学校まで送ってくれ、夕方、通学路となるバスで一緒に帰宅し、バスの乗り方を教えてくれました。バスはアナウンスがないので表示されるバス停をしっかり見ておかなければならないのですが、これはすぐに慣れました。
マダムのお家はシェール川に面した建物の14階で、これこそ西洋のお家でした。すべてが整然と整理されてインテリア雑誌に掲載されるお家そのものです。朝ベランダでタバコをすうマダムのそばで、たとえようもない美しいシェール川と手入れの行き届いた目の前の公園とそこにすむ鳥の声を聞きながら、冷たい空気に囲まれたこの空間は忘れることができません。

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マダムは、肉が食べられない私のために、工夫をしてくれました。たくさんの野菜(説明してくれたけど、メモにしてないので、悲しいことに具体的に列挙できない)を濾してくれたスープや、オムレツ、白身魚のムニエル等、すばやく用意してくれました。
マダムは私より、若干年上なだけだけれど、クルマの運転もうまいし、日曜大工も得意だし、おしゃべりも大好きです。イスの張替えはもとより、お台所のタイル、そのタイルの絵柄の色に合わせたペンキの色の調整し塗った棚等、心地よい空間をみずから作り出しています。それは美に対するヨーロッパ人の気質そのものです。そして、なにより歩き方が素敵! 日本人の平均身長(158cm)の私より小柄だけれども、背をきちんとのばし、一歩一歩力強く歩くのです。

5日間のホームスティで自分がどうしたいのかきちんと他人に伝えることの大切さを学びました。たくさんの人の理解と助けで、今回の短期留学は実現できたのです。日本では、なかなか困っている人に声をかけることができなかったけれど、今度はぜひ自分から手助けが必要かどうか聞くつもりです。

東日本大震災はとても不幸な出来事だけれども、平和ボケしている私たちに大事なことを教えてくれました。日本の復興は残された私たちがどう日本を元気にしていくかにかかっています。困難な状況は、もう若くない私にチャレンジはまだまだできる!と教えてくれました。